頭痛や生理痛などのときに「ロキソニン」「バファリン」「イブ」などの痛み止めを飲んだことのある人は多いと思います。

特に女性は頭痛持ちの人が多いです。ホルモンバランスの影響により生理前や生理中、生理後や排卵日付近などで頭痛が起こりやすくなるからです。また、パソコンやデスクワークなどで長時間同じ姿勢が続くと肩こりとともに頭痛が起こることもあります。

しかし、頭痛薬の飲みすぎで不妊になったり胎児に影響がでたりするのではないかと心配で、つらい頭痛を我慢している人は多いです。そこで、ロキソニンやバファリン、イブなどの頭痛薬が妊活や不妊治療に及ぼす影響や、胎児に及ぼす影響などについて解説します。

また、不妊になったり胎児に影響が出たりしないためには、どの時期にどのような頭痛薬を選べばいいかを説明します。

痛み止めの成分には排卵を抑える作用がある

ロキソニンやバファリンなどの痛み止めの成分を専門用語で非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)といいます。痛み止めのNSAIDsとして使用される医療用医薬品(病院で処方される薬)の例を以下に示します。

  • アスピリン(商品名;バファリン配合錠Aなど)
  • メフェナム酸(商品名;ポンタールなど)
  • ジクロフェナク(商品名;ボルタレンなど)
  • インドメタシン(商品名;インテバンなど)
  • ロキソプロフェン(商品名;ロキソニンなど)
  • エトドラク(商品名;ハイペンなど)
  • イブプロフェン(商品名;ブルフェンなど)
  • ナプロキセン(商品名;ナイキサンなど)

NSAIDsには痛みを抑える作用だけでなく、排卵を抑える作用もあります。これには以下のような理由があります。

頭痛などの痛みの元となる物質を「プロスタグランジン」といいます。何らかの原因で体に炎症が起こると痛みの元であるプロスタグランジンが作られます。プロスタグランジンがたくさんできると痛みを感じ、頭痛や生理痛などが起こります。

痛み止めのNSAIDsは、痛みの元であるプロスタグランジンをつくる酵素の働きを抑えます。つまり、NSAIDsを飲むと痛みの元が作られなくなるため痛みが治まります。

一方で、プロスタグランジンには痛みを引き起こす以外にも様々な作用があります。その一つに卵子の細胞の成熟と排卵を促す作用があります。

排卵が起こる前の卵胞の中でもプロスタグランジンが作られます。排卵前の時期に卵胞の中でプロスタグランジンが作られると、卵子の成熟が促され、排卵が起こります。

もしこの時期に頭痛などでNSAIDsを飲んでしまうと、痛みの起こっている部位だけでなく卵胞の中でもプロスタグランジンが作られなくなります。すると卵子が十分に成熟できず、排卵が抑えられてしまうので不妊につながります。

実際に、関節リウマチなどの病気で長い期間NSAIDsを服用している女性に一時的な不妊の症状がみられたという報告もあります。

また、体外受精の採卵のときには、わざと排卵を抑える目的でインドメタシンやジクロフェナクなどのNSAIDsが処方されることがあります。以下の写真は排卵を抑える目的で処方されることのあるインドメタシンやジクロフェナクの座薬です。

体外受精では、女性の卵子を体の外に取り出して男性の精子と受精させます。このときは排卵誘発剤を使用して卵子をたくさん育て、卵子が成熟したら卵巣に針を刺して卵子を体の外に取り出します。これを採卵といいます。

このとき、採卵する前に自然に排卵が起こってしまうと、採卵日に育った卵子を取ることができなくなってしまいます。そこで排卵を抑える薬が必要となります。排卵を抑える薬にはいくつか種類がありますが、その一つとしてNSAIDsが使用されることがあります。

採卵の場合はNSAIDsの排卵を抑える効果が役に立ちますが、それ以外の場合は不妊につながる可能性があります。妊活中の女性は排卵前の時期にNSAIDsを飲むのは控えた方がいいです。

生理周期が28日の人の場合だと排卵日は生理周期14日前後となりますので、生理周期11~14日頃まではNSAIDsを含む頭痛薬を飲まないようにしましょう。

アセトアミノフェンなら排卵抑制効果はない

痛み止めとして広く使用されている成分で、NSAIDs以外に「アセトアミノフェン」というものがあります。市販の頭痛薬にも使用されています。医療用ではカロナールなどの商品名で使用されています。

以下が実際に医療用として病院で処方されるカロナールの錠剤の写真です。

アセトアミノフェンが痛みを抑える仕組みはNSAIDsとは異なります。アセトアミノフェンは脳に作用し痛みを感じにくくさせる効果があります。NSAIDsとは異なる仕組みで痛みを抑えるため、卵子の成熟や排卵まで抑えてしまうことはありません。

排卵前の時期に頭痛などで痛み止めが必要な場合は、アセトアミノフェンを含む頭痛薬を選ぶようにしましょう。

卵胞期の痛み止めは卵胞を育て、着床を促す

アメリカにおいて259人の女性を対象に、市販の鎮痛剤の使用が排卵機能や女性ホルモンに与える影響を調査したデータがあります。(R. A. Matyas et al., Human Reproduction vol.30, pp.1714-1723, 2015)

この調査では、アメリカで市販されている痛み止めの成分として、イブプロフェン、ナプロキセン、アスピリン、アセトアミノフェンを対象にしています。

ナプロキセンは日本ではドラッグストアなどで市販されていませんが、医療用医薬品として病院で処方されることはあります。イブプロフェンとアスピリン、アセトアミノフェンは日本でも市販されている、ドラッグストアなどで誰でも購入できる痛み止めの成分です。

この調査によると、卵胞期(生理周期1日目~排卵前の卵胞が発育段階にある時期)に鎮痛剤を使用した女性は、使用しなかった人よりも無排卵の人の割合が少ないという結果となりました。このことから、卵胞が発育段階のときに痛み止めを服用すると、卵子の発育を助ける効果があるのではないかと考えられます。

さらに、卵胞期に鎮痛剤を使用すると、黄体期のプロゲステロンの値が高くなるという結果になりました。黄体期とは排卵後~次回生理予定日までの時期のことで、基礎体温の高温期になります。

プロゲステロンとは、女性ホルモンの一つで別名黄体ホルモンとも呼ばれます。高温期にたくさん分泌されることで受精卵が着床しやすいように子宮環境を整える働きがあります。

つまり、卵胞が発育段階にある時期に痛み止めを飲むと、卵子の発育を助ける効果や着床環境を整える効果があることになります。実際に、一部の不妊治療のクリニックでは、卵子を育てるためにロキソプロフェンなどの飲み薬を排卵誘発剤と一緒に使用する治療を行っているところもあります。

排卵直前の時期に痛み止めのNSAIDsを飲むと不妊につながりますが、それ以前の段階では痛み止めを飲むと妊娠しやすくなる可能性があります。生理中~生理周期10日目くらいまではNSAIDsやアセトアミノフェンなどの痛み止めを服用してよい時期であるといえます。

不妊治療や不育症などで低用量アスピリンを服用中の場合に避けるべき頭痛薬

不妊治療をしている人の中には、不育症の治療や着床を助ける目的などで少ない量のアスピリン(低用量アスピリン;バイアスピリン100mg、バファリンA81など)を処方されている人がいると思います。少ない量のアスピリンを服用すると血が固まるのを防ぐため、血流を改善する効果があるからです。

以下が実際に病院で処方される低用量アスピリンの写真です。

一方で、アスピリンはNSAIDsの一つに分類される薬で、痛みを抑える効果もあります。たくさんの量を飲むと血液が固まるのを防ぐ効果はなくなり、痛みを抑える効果が出てきます。実際に、市販の頭痛薬や病院で処方される痛み止めにも使用されています。

以下は病院で処方される医療用のアスピリンの写真です。

不育症などで低用量アスピリンを飲んでいる人が頭痛薬のアスピリンを飲んでしまうと、アスピリンの量が多くなり血が固まるのを防ぐ効果が得られなくなってしまいます。

また、低用量アスピリンの効果を弱めてしまうそのほかの痛み止めの成分として、イブプロフェンやナプロキセンなどがあります。低用量アスピリンを服用している場合は、アスピリンやイブプロフェン、ナプロキセンを含む頭痛薬は飲まないようにしましょう。

また、市販の頭痛薬に配合されている「エテンザミド」という成分もアスピリンと構造が似ており、同じように働く可能性があります。低用量アスピリンを服用している人は避けた方が無難です。

一部の痛み止めの成分は流産の可能性を高める

アメリカの女性1063人を対象に、妊娠期間中の鎮痛剤の服用と流産の関係を調べた調査があります。(De-Kun Li et al., British Medical Journal, vol.327, pp.368-381, 2003)

その結果、NSAIDsの一種であるイブプロフェン、ナプロキセンを妊娠期間中に服用した女性は、服用しなかった人と比べて流産率が1.8倍高くなりました。

特に、受精直後の1週間の間に服用した場合と長期間服用した場合の流産率は高く、服用しなかった場合と比べ流産率は5.6~8.1倍となりました。

このように、一部のNSAIDsを妊娠初期に長期間服用すると、流産のリスクが高まる可能性があります。受精直後の1週間という極めて初期の段階でも流産を引き起こす可能性があるため、排卵後の高温期はイブプロフェン、ナプロキセンは避けるべきです。また、どうしても服用する必要がある場合は短期間にとどめ、長期間飲み続けるのは避けましょう。

一方、この調査では、アセトアミノフェンを妊娠中に服用しても流産率は上がりませんでした。受精直後の1週間や長期間服用した場合でも、流産率は上昇しませんでした。

このことから、痛み止めの中でもアセトアミノフェンは流産率を上げることはないため、妊活中の女性にも安心して使用できます。排卵後の高温期に痛み止めを飲む場合はアセトアミノフェンを選ぶと安心です。

妊娠中の胎児への影響(奇形など)について

妊娠したことに気づいていないごく初期の段階で痛み止めの薬を飲んでしまった場合、おなかの赤ちゃんに奇形などの影響が出てしまうのではないかと心配になります。

しかし、痛み止めのNSAIDsやアセトアミノフェンには催奇形性は確認されていません。つまり、妊娠初期に少量飲んだとしても赤ちゃんの奇形のリスクが上がることはありません。

ただ、妊娠後期に服用すると、おなかの赤ちゃんの発育や体の機能に悪影響を及ぼす可能性があります。NSAIDsを妊娠後期に飲んだ場合、胎児の血液の循環がうまくいかなくなったり、脈が遅くなったりすることが報告されています。また、胎児の腎臓の機能が悪くなりおしっこが出なくなったり、胎児を包んでいる羊水の量が少なくなってしまったりすることもあります。

万が一妊娠初期に頭痛薬を飲んでしまったとしても、深く思い悩む必要はありません。しかし、妊娠がわかった段階で自己判断での服用はやめて、産婦人科医に相談しましょう。

妊活・不妊治療中の市販の頭痛薬の選び方

市販の頭痛薬は、同じような商品名でも含まれている成分が違うことがあるので注意が必要です。

例えば、「バファリンA」という商品名の薬には、痛み止めの成分として「アスピリン」が入っています。しかし、「バファリンEX」という商品名の薬に含まれている痛み止めの成分は「ロキソプロフェン」になります。また、「バファリンルナi」という商品には痛み止めの成分として「イブプロフェン」と「アセトアミノフェン」の2つが入っています。

このように、同じ「バファリン」と名前がつく商品でも、含まれている痛み止めの成分がそれぞれ異なります。

また、市販の頭痛薬は、痛み止めの成分の効果を高めたり、胃を保護したりする目的で複数の成分が配合されているものもあります。市販の頭痛薬を選ぶときは、商品名だけでなく成分名も見て選びましょう。

  • アスピリンを含む市販薬

アスピリンを含む痛み止めは、排卵前である生理周期11日頃~排卵日までは飲まないようにしましょう。また、低用量アスピリンを服用している場合は飲まないようにしましょう。

アスピリンを含む市販薬にはバファリンAなどがあります。アスピリンは別名アセチルサリチル酸とも呼ばれます。以下はバファリンAの写真です。

  • ロキソプロフェンを含む市販薬

ロキソプロフェンを含む市販薬は、排卵を抑える作用があるので、排卵前である生理周期11日頃~排卵日までは避けましょう。

ロキソプロフェンを含む市販薬として、ロキソニンS、ロキソニンSプラス、ロキソニンSプレミアムなどがあります。以下はロキソニンSの写真です。

ロキソニンSはロキソプロフェンが単独ですが、ロキソニンSプラスは胃を守る成分である酸化マグネシウムが一緒に配合されています。また、ロキソニンSプレミアムは、ロキソプロフェンの鎮痛効果を高めるための成分としてアリルイソプロピルアセチル尿素と無水カフェインが配合されています。また胃を守る成分としてメタケイ酸アルミン酸マグネシウムが配合されています。

バファリンEXにもロキソプロフェンが含まれています。胃を守る成分として乾燥水酸化アルミニウムゲルが一緒に配合されています。

ロキソプロフェンを含む薬は第1類医薬品という分類で、薬剤師のいる薬局でしか買えません。一部のドラッグストアなどで薬剤師がいないお店にはおいていないので注意しましょう。

  • イブプロフェンを含む市販薬

イブプロフェンを含む薬は、排卵を抑える作用があるため、排卵前である生理周期11日頃~排卵日までは避けましょう。また、流産のリスクが上がる可能性があるので高温期の服用も避けた方が無難です。

生理周期11日頃~次回生理予定日までは飲まないようにしましょう。生理周期1日~10日頃までは服用しても大丈夫です。

ただし、低用量アスピリンを服用中の場合は生理周期にかかわらず飲むのは避けましょう。

イブプロフェンを含む市販薬には、イブ糖衣錠、イブA錠、イブA錠EX、イブクイック頭痛薬、イブクイック頭痛薬DXなどがあります。以下はイブA錠EXとイブ糖衣錠の写真です。

イブ糖衣錠はイブプロフェン単独で含まれていますが、イブA錠やイブA錠EXには、イブプロフェンの鎮痛効果を高める目的でアリルイソプロピルアセチル尿素と無水カフェインが配合されています。イブクイック頭痛薬やイブクイック頭痛薬DXには、それらに加えて胃を守る成分である酸化マグネシウムも配合されています。

そのほか、ノーシンピュア、セデスキュアなどもイブプロフェンを含んでいます。

  • アセトアミノフェンを含む市販薬

アセトアミノフェンは排卵を抑えたり流産を引き起こしたりすることはありませんので、生理周期のいつでも飲むことができます。

アセトアミノフェンを単独で含む市販薬としては、タイレノールがあります。以下はタイレノールの写真です。

また、ラックル速溶錠も、タイレノールと同様にアセトアミノフェンを含んでいます。以下はラックル速溶錠の写真です。

「腰痛や神経痛に」と書いてありますが、頭痛や生理痛などの痛みにも効果があります。

薬を使わずに頭痛を和らげる方法

生理周期にあわせて適した薬を選ぶことで、妊活中でも頭痛薬を使用することができます。しかし、あまり薬に頼りすぎると頭痛薬の飲み過ぎが原因となる薬物乱用頭痛を生じることもあります。

頭痛薬を飲む日が1ヶ月に15日以上である状態が3ヶ月を超えて続く場合は薬物乱用頭痛である可能性が高いです。薬に頼りすぎずに痛みを和らげる工夫も必要です。

女性に起こりやすい頭痛のタイプには大きく分けて2つあります。筋肉が収縮することで血流が悪くなり起こる緊張型頭痛と、脳の血管が広がることで起こる偏頭痛です。どちらのタイプの頭痛であるかによって対処法が異なります。

緊張型頭痛は、頭全体が重く締め付けられるような痛みが特徴で、肩こりや首のこりなども一緒に感じることもあります。精神的なストレスにさらされたときやデスクワークなどで長時間同じ姿勢をとったときなど、血液の流れが悪くなることで起こります。

緊張型頭痛の場合は、ストレッチなどで肩や首をほぐしたり、首や肩を温めたりすることで、血液の流れが改善して痛みが和らぐことが多いです。

偏頭痛は、ズキズキと脈打つような痛みが特徴で、光や音に敏感になってより痛みを強く感じます。また吐き気を伴うこともあります。原因ははっきりとは解明されていませんが、頭の中の血管が広がりすぎることで起こると考えられています。

偏頭痛の場合は、体を動かしたり体を温めたりするのは逆効果です。より血管が広がって痛みが増してしまいます。

偏頭痛の場合はこめかみを冷やすと痛みが和らぎます。また、光や音に敏感になっていますので、暗い静かな部屋で横になりゆっくり休むといいです。

まとめ

妊活中の女性の頭痛薬は、飲む時期や種類によっては不妊につながる可能性があります。

生理周期1~10日目頃まではどの成分の痛み止めでも服用して大丈夫です。生理周期11日頃~排卵日までの時期に痛み止めを飲む場合は、排卵を抑える作用のないアセトアミノフェンを選びましょう。

また排卵日から次回生理予定日までの高温期(黄体期)には、イブプロフェン、ナプロキセンを含む痛み止めを飲むと流産のリスクが上がる可能性があるので避けるのが適切です。

不育症の治療などで低用量アスピリンを服用している場合は生理周期にかかわらず、アスピリン、イブプロフェン、エテンザミドを含む頭痛薬は避けましょう。

これらのことに注意して妊活をすれば、頭痛薬による不妊を避けることができます。